山の声 園の人達

2014年01月14日

園の人達

園では、手足のまあまあ利く人で組織されたブラスバンド部があった。その人達は、毎日練習していた。年に一、二回演奏会があり、出演していたようである。

老人を出来るだけ、寝たきりにせぬため、また、痴呆にせぬための医学的音楽療法が取り入れられている。特に、田中多聞先生の指導によるものである。

私は一日園に居る日は、いろんな老人と話した。どの老人も話したがっている。

全然身寄りのない人、子供の無い人、子供がいても見舞いに来てくれぬ人、様々である。この園で一番老齢者は、百三歳のおばあさんだった。もう二十年も入園しているそうで、今は寝たきりである。

夫の隣のベッドのおじいさんは、私を見ると話したがった。このおじいさん( A 氏)は、一年ほど前に入園したらしい。退院してみると、自分の部屋は孫の部屋になり、自分の居場所がなくなっていた。

その家を建築する時、自分の持っている金を息子に渡したそうである。しかし、息子は若くして病死し、その家は嫁さんが相続して、嫁の名義になっているという。

その上、嫁さんは、

「老人夫婦の身元引受人には自分はなれぬ。夫死亡後、幼い子供たちを育てていかねばならぬので。」

と言うのだそうである。

老人はその鬱憤をのやり場がなく、私に話すのであった。仕方なく、老夫婦でこの園にお世話になっているけど、自分は人手を借りずに動けるので、家にいることが出来ると悔しがられていた。

七十年も八十年も生きてきたどの老人の話を聞いても、様々の人生模様があった。少なくとも家族に囲まれ晩年を幸せに送ることには縁遠い人達である。