三歳の童子でも知っている

末の上に座す道林和尚。

中国・唐の時代の禅僧に道林という人がいた。

この人は、杭州のの秦望山で修業をしていたが、老松の上に巣を造り、その巣の中で座禅していた。
だから、人々は彼に、鳥? 和尚(ちょうかおしょう)と字を付けたという。
この時期、詩人の白楽天が刺史(知事)として、ここにやって来た。

白楽天はこの和尚の話を耳にして、 秦望山を訪ねた。
老松の上の和尚を見るなり、白楽天はこう叫んだ。
「禅師の住む所、はなはだ危険なり」
この言葉に道林はすかさずこう返した。
「太守、そなたの方が危険なり」、と。
なぜなら、松の上は仏教の世界だ。
地上は政治の世界。
政治の世界は、左遷、失脚、馘首、詰め腹、黒い霧、スキャンダル等、様々な危険が渦巻いているのだ。

そこで、白楽天は、こう質問した。
「いかなるか、是れ、仏法の大意?」

仏教の教えとはいったい何なのか?と聞いたのだ。

これには道林は、こう返した。
「諸悪莫作、衆善奉行」
分かり易く言えば、「悪いことはするな、善いことをしろ」と言ったのだ。

白楽天は、
「そんなこと三歳の童子でも知っていますよ」、と答えたら、
道林は、
「しかし、実行することは、80の翁だって難しいぞ」、と言った。

白楽天の完敗である。