客なれば、心を残さず

沢庵和尚

沢庵漬けで知られる沢庵和尚は幕府の宗教行政に抵抗して、流罪となった。

しかし、その後、徳川家光将軍の帰依を受け、品川に東海寺を創建してそこに住んだ。

ある日、家光がこの東海寺にやって来る。

禅寺には将軍に献ずる珍しい物などない。

そこで、沢庵は「貯え漬け」の香の物を出した。

家光は喜んでこれを食べ、

「これは”貯え漬け”にあらず、”沢庵漬け”なり」

と言ったという。

そこから、沢庵漬けができたらしい。

ここに沢庵和尚の言葉を紹介する。

「人間は、親に招かれ、この世にやって来たと思えばいい。満足できる食事が出されれば、御馳走と思っていただき、満足できぬときでも、自分は客だから褒めて食わねばならない。夏の暑さや冬の寒さも客であるからじっと耐えねばならない。子や孫、兄弟たちも、自分と一緒にやって来た相客と思って仲良く暮らし、心を残さず、さらりと辞去せねばならない。」

「父母に呼ばれて仮の客に来て、心残さず帰るふるさと」

我々の故郷は仏の国である。お浄土なのだ。お浄土から我々はこの世に旅に来ている。旅行者であるから、いろいろな苦労もある。しかし、その苦労に耐えてこそ旅は楽しい。

そして、立ち去る日が来れば、心を残さず辞去して仏の国に帰ろうと沢庵和尚は言っているのだ。