妻の声


「あんた、もう、6時半ですよ。会社に遅れますよ。」

この声で起きてきたのに、最近はこの声を聞くのが一番いや。
会社に行っても、特別仕事があるわけではない。
会議にも出られない。
なのにどうして、早く起きて、満員電車に乗って行かなければならないのか?
自分のこれからの人生を考えなければいけないこの時期に、会社で無用な時間を過ごすのは一番いや。
そこで、今日は、決めた。会社を休むと。
会社は自分を必要としていない。
だから休んで、どこがいけないのか?
でも、女房の言葉は厳しい。

「あんた、会社を狡休みするの?」
狡休みじゃあない、と叫んでも、女房は聞く耳を持ってくれない。
午前中、家にいても、何もすることがない。
散歩をするのも、隣近所の目が気になる。
歳をとるということは、まさにこういうことなのかを実感する。
女房は何も言わなければ、それで嫌だし、
「あなた、これからどうするの?」と言われるのもたまらない。