運命線の誕生

私が美容師に戻って一年。チーフだった先輩に誘われ、僕は新しくオープンするお店に移る事にしました。

そのお店はオープンしたばかりと言う事もあり、暇があると駅前に立って、歩いている人にチラシを配っていました。
ある夕方、一人の女性が僕に近づいて来ました。
その女性は僕の前に来ると、右手を出し、「よかったらチラシ一枚ください」
って言ってきた。
彼女は笑顔でチラシを受け取ると、こう言ったんです。
「霊感、強いですよね?」
「・・・?
その日の夜、近くの居酒屋で会う約束をしました。
彼女の話はとても刺激的でした。やはり幼い頃から霊感が強く、小学生の時はクラスメートだけではなく、担任の先生からも気味悪がられていたそうです。
居酒屋の中で彼女は、「力と言うのがあって、人にエネルギーを与える事も、奪う事も出来るんだよ」と話してくれました。

さらに、彼女はその力を見せてくれました。
「右手をテーブルの上に、手の平を下にして置いて。力を入れず、リラックスしてね」
向かい合って座ってたので、僕は彼女の言う通り、手を出し、テーブルに置きました。
すると彼女は僕の手の上、15センチ程のところで右手をかざすと、「いい?いくよ」
その瞬間、耳元で「ゴオーー!」って、まるで掃除機のような音がしたかと思うと、右手は献血をしてるみたいに血を抜かれてる感じがしました。
それもものすごい勢いで。
彼女はびっくりした顔をして、
「大丈夫ですか?今まで何人かの人にやってたけど、こんなにたくさん、それもすごい勢いでエネルギーが入って来た事はない」
と驚いていました。
ほんの数秒の出来事だったんですが、僕の右手はまったく自分で動かす事が出来ず、元に戻るまで30分以上かかり、しびれは夜中まで残ってました。
すると今度は《色当てゲーム》と言うのをやる事になりました。
これは彼女が高校生の時、友人とよくやってたそうなんですが‥。
まず、頭に色を浮かべては、そのイメージを相手に送ったり、相手が想い浮かべた色を当てるというゲームでした。

その時、私は、自分が想った色を当ててもらうよりは、彼女が想い浮かべた色を見てみたいと思いました。
そして二人、手をつなぐと目を閉じました。
ふっと、気をしずめた瞬間、僕の頭のある部分に、緑だったり赤だったり、それは色だけではなく、感情も‥。
「緑にしようか。赤にしようか。緑、黄色、赤。やっぱり緑」といった感情です。
僕はびっくりして、そのまんまの、どの色にするか迷って、そして最後は緑にした、と言う事等を彼女に伝えました。
彼女はほんとに驚いた顔をしてて、
「今までこのゲームをしてて、普通はどの色にするか決めて、そこから意識を集中させて相手にイメージを送るのに‥。そんな、どの色にするか迷ってる時から色がわかったと言う人はいない。あなたはすごい力を持っていると思う」
って言われました。
でもその時、私は、よくわからず、何もかもが初めてで、ただワクワクしてるだけでした。
結局、その日は居酒屋が閉まるまで彼女の話をおもしろがって聞いてました。
そして次の日の朝。いつものように美容室の準備を済ませると、僕は受付でお客さんを待っていました。
と、突然。ほんとに突然、右の手の平に激痛が走りました。それはすごい痛さで、手を開く事が出来ず、グーッとこぶしを握りしめたまま、左手で右手首を掴むと、その場にうずくまってしまいました。
まるでその痛みは、右手の、その手の平の皮をひっばられて、カッターナイフか何かで切られたような痛みでした。
このまま手を開く事が出来なくなるんじゃないかと怖くなり、恐る恐る左手でゆっくり、右手のまずは小指から、薬指と一本一本、ゆっくりと指を動かし、右の手の平を開いていきました。
そしてその右の手の平を見た瞬間‥。
まあ、息を飲むとはこの事だと思います。
そこには‥。手の平の真ん中に、縦に真っ赤な線が入っていました。まるで赤いペンでえぐりながら書いたような一本の線‥。
そしてその赤くなった手の平の線を見た時、二年前の事を思い出しました。
このまま美容師を続けるか、それとも一年間違う仕事をしてみるか‥。迷っていた僕は、ある人に手相を見てもらったのです。
彼女は私の手相を見るなり、
「今は好きな事をやりなさい。でもまた美容は続けなさい」って言ってくれました。
そして「あなたの運命はまだ決まってない。あなたはまだ子供の手だ。見てごらん。ここに何もないでしょう。ここに運命線があるはずだけど、あなたにはまだない。今はまだ子供の手だけど、そのうちあなたの運命が決まったら、この線が現れるよ」って‥。
さっきまでなかった運命線が突然現れた瞬間でした。
どうやら、僕は何かしらの運命を授かったんだと思いました。
それからです。なにか不思議な現象とか、意味のある出会いや話が合った時、この右手の運命線が真っ赤になって、知らせてくれるようになったのは‥。