“コロンブス”おもしろかったよ
“コロンブス”という本は、郷(8才)にとって6冊目の本である。
昨年から1ケ月半のペ-スで1冊読んでいる。
1冊が約200ペ-ジなので大変は大変である。
今までに読んだ本は、
“リンカ-ン”、“お釈迦さま”、“エジソン”、“ガリレオ”、“ニュ-トン”。
わが子にしてはよく読んできたと思っている。
たとえ、それが半強制的にでも。
また、ニンジンをぶら下げられたにしても。
私の過去を振り返えっも、小学3年生で教科書以外に読んだ本などなかった。
6年生のとき初めて図書館で“福沢諭吉”を借りて来て読んだのを記憶しているだけ。
そんな私に較べたら、はるかに進んでいると思う。
ところが、悲しいかな我が家には、静香(10才)がいる。
静香の読書量と言えば、大変なものである。
図書館の本で面白そうなものは、ほとんど読んだという。
時々、休みの日、3人の子供を連れて散歩がてら、本屋に行くことがある。
その時、みんなに一冊ずつ本を買ってやる。
静香の選ぶのは、厚くて値段が張る。
それでも教育のためと思い、千円冊を二枚渡す。
すると、お釣りがわずかに戻って来る程度。
それでも、静香の笑顔を見ると、やはり、私も嬉しい。
家に帰り、静香は、その辺りに寝そべりながら読み始める。
途中、夕食が入り中断するが食事を済ますとまた読み始める。
周りでテレビがかかっていても全く平気らしい。
そうして、おもむろに起き上がり、本をテ-ブルに置き、「読んだ」と一言。
「面白かったか」と聞くと、
「ウン」と返って来るだけ。
親の私としては複雑な心境。
買ってやった本をキッチリ読んでくれるのは実に嬉しい。
しかし、実にあっけない話である。
また、あれだけの本をそんなに速く読めるのかという驚きもある。
一方、郷の方と言えば、いつ読むのか、果たして読むのだろうか、といった具合。
“コロンブス”は、毎週土、日曜日に私が横で読むのを聞いてやっている。
いつも二章か三章。ペ-ジにして約20~30ペ-ジ。
ところが、最近になって郷の自主性を重んじ、郷に、
「毎日、一章でいいから読め」と言っている。
毎朝、家を出るとき、いつも確認を入れる。
郷はいつも、「ウン、解ったよ」と応える。
そして、その晩、「読んだか?」と尋ねると、ただ首を横に振るだけ。
そんな毎日が続く。
ところが、ある晩、7時過ぎ、私が家に帰ると、沙耶香(2才)が私に向かって、
「サ-タンねぇ、一章読んだよ。“コロンブス” 面白かったよ」と言った。
私がキョトンとしていると、お母さんが説明してくれた。
郷が学校から帰ると、沙耶香はツカツカと歩き、
“コロンブス”の本を持って来て、ペ-ジをめくり、声を出して読み始めたと言う。
当然デタラメではあるが。そんな光景を見た郷は、
何かを感じたのか、あるいはお母さんに言われたのか、
その辺は定かではないが、郷は私のいない所で確かに一章読んだのである。
これは郷にとっては画期的な出来ごとであった。
ところが、その晩、郷から聞いた言葉は、少し力なく、
「お父さん、一章読んだよ」だった。それでも、私は、郷を誉めてやった。
「よくやった」と。
ところが、残念ながらその後、郷から、
「お父さん、一章読んだよ」という言葉は聞こえて来ない。
しかし、私は、あまりとやかく言うつもりなどない。
郷は私より多くの本を読んでいるのだから。