書き下ろし小説 山の声

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 茂田井の山

取りあえず茂田井の松山を、見に行くことにした。乳飲み子を連れ、夫について行った。 松山まで行く途中、木間道が掛っていた。二本のレールを並べ、枕木は小丸太を打ち付け、その上を木材を積んだ橇(そり)が通るのである。山道だから…

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 日支事変起こる

昭和十二年に日支事変が起こった。 昭和六年日本軍が満州に引き起こした侵略戦、つまり満州事変があり、その翌年の昭和七年に五一五事件があり、海軍将校や士官学校の生徒らが、支配階級に不満を抱き襲撃して、政党内閣の幕を閉じた。 …

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 長男出生

昭和十一年頃、私の工場では、鮮魚箱を主に作っていた。世の中は不景気で、新築の家も少なく、木材の需要は限られていた。 現在のように、木材市場も無かったので、家一戸分の用材を全部揃えるには、日頃から原木を確保しておく必要があ…

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 太刀洗飛行隊

私との結婚前の話であるが、夫は現役の時、太刀洗の飛行隊に入隊した。それで、飛行機のことは勿論、機械のことは専門家並みに詳しかった。 夫が現役二等兵の時、秩父宮様が太刀洗の飛行隊に一カ月間入隊された。 久留米市に日本ゴムの…