激動の昭和の時代に、九州の一人の男が、山に生きる


私は娘たちのすすめもあって、一人には広すぎる家も、物も、見栄も捨てた。

今は小さなマンションに、一人で住んでいる。ここは環境が良く、便利なので、私は気に入っている。

時の流れは、人の心をも洗ってくれるものか、川の流れのように、この世の常ならぬことも、私の人生を通して経験した。

すべての責任を果たし、欲も捨てた私は、大変気楽である。

遅すぎたけれど、七十歳になって、短歌を習い始めた。これも今では私の生甲斐となっており、お蔭で諸先生や、歌友の方々にも巡り会えた。

自伝を書いてゆくうち、今までにお世話になった方、いろんな方との出会い、懐かしい人々を回顧している。

それにしても、何と多くの方々が故人となられたことだろう。

喜びも悲しみも、数多く経験したことを痛感しており、今となっては、夫にも感謝している。

いずれ私も、娘と同居する時期が来ると思うが、当分は今まで味わえなかったこの自由な一人の生活を大切にして、実りある老後を願っている。