袈裟に頼め
我々は、人を憎み始めるとそのホトに関連した何もかもが嫌いになり、憎くなる。
逆に、恋人の持ち物は全てが好ましく思えてくる。
心理学的に言うと、そのような現象を「感情の転嫁」と呼ぶ。
坊主憎けりゃ袈裟までにくいということわざがある。
袈裟について一休禅師のエピソードがある。
京都の商家で盛大な法要があり、その導師に一休和尚が呼ばれた。
一休和尚はどこからか汚らしい着物を見つけてきて、手足に煤をつけ、菰(コモ)を被ってその商家へ行った。
玄関から中にはいろうとすると、家の主は、
「見苦しい奴じゃ。さっさと追い出せ!」、と下男に命じた。
一休和尚はさんざん棒で打たれて、外に蹴りだされた。
その後、和尚は金襴の袈裟に身を包み、堂々と商家の門前に立つ。
主人は、「どうぞ、どうぞ」と奥へ案内しようとした。
「いや、愚僧はここで結構です」、と一休禅師は玄関を動こうとしない。
「ここは下郎の座るところです。さあ、どうぞ奥へ・・・」、と主人。
それに対して、一休和尚はこう言った。
「では、わしのこの衣だけを奥へ連れて行ってください。中身のわしは、ここから追い返されたのですから・・・」