インドの裸の王様
詐欺師が王様に金襴の着物を作って差し上げると言う。
とても軽い着物で、この着物は善人には 見えるが、悪人には見えないという代物である。
そう言われると、王様はじめ家臣たちは、正直に「私には見えない」とは言えない。
そこで王様はその着物を着てパレードする。
ところが、子供は正直で、
「あれ、王様は裸で歩いている」
と大声で言う。
この話とよく似た話が仏教の経典に出てくる。
昔、インドのある国に毒の雨が降った。
その毒の入った水を飲むと、人間は7日間、気が狂うのである。
その国の王様は、毒の雨が降る前に井戸に蓋をしておいた。
だから、王は毒の入った水を飲まずに済んだ。
けれども、人々に知らせるのが遅れたもので、家来たちはみんな毒の水を飲んでしまった。
そのため、家来はみんな気が狂い、裸になって踊りながら宮殿にやってきた。
宮殿では王様は正気なので、ちゃんと着物を着ている。
すると人々は、
「大変だ、王様は気が狂ってしまった!」
と騒ぎ始めた。
それで、王様は、
「皆の者、確かに私は病気らしい。気が狂ったようだ。今病気を治す薬をのんでくる。」
と言って、奥に入って、着物を脱いで裸になって帰ってきた。
それを見て、家来たちは、安心した。
それから、7日後・・・。
毒水の効果がなくなり、家来たちは全員正気に戻った。
彼らは着物を着て宮殿に行くと、そこに裸の王様を見るのだ。
その王様を見て、彼らは、
「大変だ、王様は気が狂ってしまった! 」
と騒ぎ始めた。
王様は苦笑しながらいった。
「わしは気が狂っているのではない。わしはお前らに合わせていたのだ。お前たちが正気に戻ったようだから、わしも服を着ることにしよう。」
この王様こそ、釈迦そのもののような気がする。