トッパ先生、研修1日の午後で早くも人気者。
講師の先生は多分、警察関係の退職者。と言っても、単にお巡りさん経験者がいきなり、警備やそれに関する法律を教えられるものではない。
しかし、話は決して面白くない。そのことは講師自身もよく解っていて、私の話はあまり面白くないでしょうと言うほど。
トッパ先生は自分の経験から、中学校国語の時間で、生徒に退屈させたら自分の負けだという強い信念を持っていたため、トッパ先生の話は面白かった。
生徒の退屈さを見てとり、話はすぐ脱線する。自分の失敗談や歴史物語や近所の面白話を展開し始める。話術があったため、本当に楽しかった。これが国語?と疑う
丸顔で、頭の毛が薄かったトッパ先生は、落語家であった。
警備の講義が退屈になると、トッパ先生はすぐに質問する。
「例えば、警備の時、万引きがあったばあい、警備員はその男を現行犯で逮捕できるんですか?」
講師は、慌てて、
「間違っても、逮捕はしないように」と言う。
トッパ先生は、畳み掛けるように、
「テレビでは、カッコよく逮捕していたんだが・・・」
「じゃあ、逃げるんですか?」
講師は、
「あくまでも、我々は警察官ではないのです。だから、逮捕権はありません」、と説明する。
「じゃあ、我々、警備員はなんのためにいるんですか?」、とトッパ先生は本質的な事を聞く。」
聞かれた講師は、待ってましたと、
「警備員は、犯罪抑止のためと思ってください。残念ながら、犯罪が起きたら、警察を呼ばずに、警部の本部に報告するだけでいいんです。」、と。