江戸前期の禅僧に鉄眼道光(1682年没)がいた。
彼は36歳の時、『大蔵経』の刊行を思い立ち、17年かかって6956巻を完成した。
途中、近畿地方に大飢饉が起こり、鉄眼はせっかく集めた刊行資金を投げ出して難民を救った。
そしてまた、新たに募財して『大蔵経』を刊行したのだ。
鉄眼には仏教の教えを分かり易く説いた『仮名法語』がある。
その一節に、
「鏡に映った影を見て迷っているのが我々凡夫で、鏡そのものを見ることができるのが仏(聖者)である。また、凡夫は黄金で作られた物の形にこだわって、黄金そのものを見ようとしない。黄金そのものには何らの差別もないのに。」
鉄眼は言う。
「どの人もどの人も、あらゆる人が仏の子だと知るのが、仏教の悟りである。」