今朝のTBSラジオの“森本毅郎のスタンバイ”で、面白いことを聞いた。
今までは、ガンの転移が骨に来たら、ガンはステージ4と診断され、もう治療もしてもらえず痛み止めで死期を待つまでとなっていた。すなわち、ガンのステージで4になったら、悲しいかな、医者はなすすべも無く手放すのだ。まして、高年齢者の場合は止むを得ない。
しかし、世の中は、捨てたものでもない。
“ガンロコモ治療”という言葉で立ち上がったのだ。その一人は金沢大学病院整形外科教授土屋先生。
ガンに整形外科医?
今まではあまり聞いたことはない。
やはり、ガンの主役は放射線医であろう。
彼らが、ガンの存在を見つけ、方針を立てるのだ。
その結果、切るか、ということになり、有能な外科医がメスを持って登場する。
腕のいい外科医がバッサリやるのだ。
彼らの話はあまり患者にとってはありがたい言葉ではない。
その後、薬だとか、内視鏡、放射線治療、免疫療法などいろんな治療手段が開発され、外科医は舞台の主役にはなれなくなった。
そんな中、整形外科医は最初から、登場できなかった。
病院では肩身の狭い存在である。
しかし、彼らも黙っていられない。
彼らは“ガンロコモ治療”という訳も分からない言葉を持ち出してきた。
そもそも、ロコモとはロコモティブシンドロームという。
2007年日本整形外科学会が提唱、運動機すなわち骨や関節などのの障害で運動機能が低下した状態のことを言うのだ。
ロコモになると要支援、要介護となるリスクを高め、寿命を縮めることになることが分かっていた。
すなわち、動けなくなれば、ベッドに寝たきり状態になり、ますます、ベッドから離れられなくなるというのは当然のこと。
これが一体どうしたというのだ!
有能な整形外科医はこのロコモを放置していると徐々に自立した生活ができなくなるため、早期の対策を取らないと主張するのだ。
高齢者は寝たきりでいいのか?
この問題は実は高齢者だけの問題ではない。
若い世代から骨や関節系の健康を維持することがロコモの予防に有用であるという自明の理をあえて、問題提起してきたのだ。
すなわち、若者もベッドでの寝たきり状態は良くなく、早くリハビリを開始しなければならないのだと有能整形外科医は叫び続けた。
しかし、正直、そんな言葉を簡単に評価するほど医学の世界は寛容ではない。
しかし、その傾向も変わらざるを得なくなってきた。
すなわち、ガン患者のロコモを放置できなくなってきたということ。
話は変わるが、ガンの多くは進行すると骨に転移する。
特に乳がん、前立腺がんなどは65%から75%が骨転移を起こす。
この他に甲状腺癌、膀胱がん、肺がん、悪性黒色腫、腎臓がんなども骨に転移する率が高い。
骨に転移すると、症状としては痛み、骨折、麻痺、しびれが生じる。
それに伴い立つ、歩く、座る、走るなどの動きが次第に悪くなる。
すなわち、ガン患者の多くは骨転移などの原因で、移動能力を低下させるということになって、ロコモと同じ症状になるのだ。
ガンの影響で移動能力が低下するロコモ状態になることをガンロコモと言うのだそうだ。
ガンの治療そのものも筋力低下、骨粗鬆症や抗がん剤によって末梢神経障害によって、移動能力の低下によろロコモ状態になる原因である。
ガンのステージ1から5の判定は、患者が動ける能力によって決定されることをご存知だろうか。
すなわち、運悪くガンになってしまい、状態が悪くなれば、次第に歩くのに不自由になり、ステージ4になってしまう。
ところが、整形外科医が動けない原因を整形外科医の目で見て、リハビリしていくとステージ4にならなくてもすむ。
ポイントはここだ。
また、整形外科医の目で見れば、今までの放射線医、内科医や外科医などとは違った診断をすることができる。
ここで、二つの例を挙げてみよう。
80代の肺がん男性患者のケースを紹介する。
PET画像診断で骨の転移が認められ、ガンのステージ4と診断された。
そして、骨への転移の症状を抑えるため、その患者が整形外科医に移された。
しかし、そのが整形外科医が画像診断したところ、骨の転移ではなく変形性頸椎症と分かった。
このことで、この患者はステージ4からステージ2に変更された。
すなわち、末期ガンからガンの初期状態と診断され、治療スケジュールが変更されることになったのだ。
もう一つのケース。
やはり、80代の乳がん女性患者のケースである。右の太ももに痛みがあった。乳がん患者ゆえに、その痛みはガンからくるものと判断され、鎮痛薬である麻薬のオピオイドを投与された。
しかし、整形外科医がレントゲン写真を撮って診断したところ、痛みの原因は腰の脊柱間狭窄症による神経症状と分かった。
そこで、ブロック注射をして、痛みをとった。そして、オピノイドは不要となったのだ。そのため、この患者は自由に動けるようになり、ガンのステージ2に判定された。