お知らせ

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 25才の女材木屋

不況の中でも、原木は買わねばならず、無理算段して少しずつ購入し、それを搬出して、売りさばくまでには、幾多の工程があり、難問は山積した。 私は一生懸命一人で勉強した。 たとえば原木を製品化する時、どんな製材のやり方をすれば…

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 召集令状

小野市の山を見てきて暫くした十三年の六月十五日に、予想通り召集令状が来た。 今日か明日かと思っていたので、さほど驚きはしなかったが、いざ直面してみると、話し合わねばならぬこと、聞いておくべきこと、取引先のことなど、とても…

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 小野市の山

昭和十二年に、大分県大野郡小野市村に、六百町の山を買った。 私の従妹がこの村に居住していて、雑貨店を営んでいた。この意図は梯茂三郎というが、椎茸を商う関係で山のことも詳しかった。 安い山が売りに出ているので、見に来ないか…

2014年01月14日 書き下ろし小説 山の声

山の声 茂田井の山

取りあえず茂田井の松山を、見に行くことにした。乳飲み子を連れ、夫について行った。 松山まで行く途中、木間道が掛っていた。二本のレールを並べ、枕木は小丸太を打ち付け、その上を木材を積んだ橇(そり)が通るのである。山道だから…