書き下ろし小説 山の声
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 おわりに
私は娘たちのすすめもあって、一人には広すぎる家も、物も、見栄も捨てた。 今は小さなマンションに、一人で住んでいる。ここは環境が良く、便利なので、私は気に入っている。 時の流れは、人の心をも洗ってくれるものか、川の流れのよ…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 夫逝く
寝たきりになって、三年目頃から、夫はあまり話さなくなった。多分言語障害が来ているのだろう。 私が帰り支度をしていると、いつの間にかスカートを、しっかりつかんでいたこともあった。帰したくなかったのだと思う。 「また、あした…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 幻覚症状
夫は入院して、半年ほど過ぎたある日、トイレで倒れて、脳梗塞 と診断された。 それから寝たきりの状態となった。意識はあるが半身不随である。 園には、有能な看護婦さんが数人居られるので、適切な処置もして下さるし、医師もすぐ呼…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 園の人達
園では、手足のまあまあ利く人で組織されたブラスバンド部があった。その人達は、毎日練習していた。年に一、二回演奏会があり、出演していたようである。 老人を出来るだけ、寝たきりにせぬため、また、痴呆にせぬための医学的音楽療法…