お知らせ
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 結婚
私が女学校を卒業した翌年、いつもお世話になっている野中さんから一つの縁談が持ち込まれた。この人は遠縁にあたるけど、裏隣りで、親しく行き来していて、私も大変かわいがられた。私はおじさんと呼んでいた。 おじさん夫婦には子供が…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 縁談
私が後一年で卒業という時、母の従妹で上広川村の村長だった重野新さんが私に一つの縁談を持って来られた。重野さんは始終私の家に来て粘り強く勧められた。 「まだ子供だから、縁談なんか早いですよ。」 と、母は言った。 「子供と言…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 女学生のころ
小学子六年の半ば頃になり、私も女学校に進みたいと考えながらも、兄が中学校をあきらめたのに、女の自分が進学するのは、兄にすまないような気がした。 そんなある日、受け持ちの十時(ととき)先生が突然家に訪ねて来られた。 十時先…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 四人家族
私が小学校を終えるまでは、家族四人の生活に、電燈は四十燭光が二つだけだった。一燈だけの家も多かったので、普通だったのだろう。 家の建坪は、一階が四十坪位、二階が十坪位で、畳の部屋が五つと、板張りの部屋が二部屋あった。土間…