お知らせ
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 男尊女卑
村では出方という風習があった。お互いに労力を出し合って、道路づくりや修理、川の掃除、学校のこと、お宮のこと、お寺のことなど皆でやっていた。特に田畑を持っている所は、農道づくりや、水路のことなど、一年を通じて、相当の日数の…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 粋なおじいさん
私のおじいさん“母の父”は、粋な人だった。 おばあちゃんは脳溢血で、五十歳で亡くなった。おじいさんは小柄で白髪だった。 大変声がよく浄瑠璃も歌も上手だった。時には三味線も弾いた。 また、俳句や短歌も作った。 自分の家の近…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 祖母の信仰
祖母フサは大変な信仰家だった。仏教の話はお坊さんに負けぬくらい知っていたので、近所のおばあさん達は、毎晩のように来て、信心の話を聞いていた。 祖母は字が全然読めないのに、聞き覚えで、一時間でも二時間でも親鸞聖人の経典を引…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 未亡人の悩み
三十歳で未亡人となった母は、再婚はしなかったので、女としては寂しい一生を送り、子供の成長だけを楽しみに、生きたようである。 私にとって、父は物心つく前から居なかったせいか、父が居なくてもどうということはなかった。死んだと…