リンゴの話

昔、私がフィリピンに出張する際、部長に相談した。
来る大口入札のため、ある病院の院長に会いに行く。
何が良いお土産だろうか、と。
すると部長は、フィリピンに行くのなら、リンゴがいいと言う。
その部長は商社出身で、海外駐在経験もある。
すぐに信じた。

成田空港で早速リンゴを探した。
すると、一個のリンゴの値段が800円。
私は驚いた。
しかし、南の国に住む人は北の果物は貴重なんだろうと。
私は、そのリンゴを1ダース買った。約1万円である。

意気揚々とマニラ空港に着いた。
病院の院長に会う前、何の気なしにホテルの近くのデパートにぶらりと出かけた。
そこで見たのは何と、リンゴである。
さすがに、私は驚いた。
あの部長の時代から、やはり、事情は随分変わったのだろう。
翌日、私はリンゴを持って病院を訪問した。
院長は、もらったものがリンゴでびっくりしたらしい。
私は経過をすべて説明し、お土産の選択を間違いを正直に誤った。
すると、その院長は、機転を利かせて、800円もしたのですかと、話題をそちらに持って行ってくれた。
私は、少し、気持ちが楽になった。しかし、お土産の選択は真剣に考える必要があることを痛感した。