横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

高校一年の終わりに自分を取り戻した私は生まれ変わって再出発した。

決して焦らないことを肝に銘じてスタートした。約半年以上の苦しみを味わい、無駄な時間を費やした私の成績はガクーンと落ちてしまった。しかし、この経験は決して無駄では無く、その後の私にはとてもプラスになった。高校の二年生からは学校から帰ると2時間みっちりと勉強した。夜は9時から夜の1時まで勉強。この6時間は英語、数学および国語のみ。実は、高校の数学の先生で中村先生という方がいた。この先生の数学はとても分かりやすく説得力があった。この中村先生が高校の夏休みまでは、英語、数学及び国語をみっちりやれ。夏休み以降は理科及び社会をやればいいと教えてくれたから素直に従ったのだ。

そのため、成績は順調に上がり始めた。しかし、人生とはそう簡単には済まないものなのだ。

ある夏の日、突然、悪魔が現れたのだ。容姿はパリッとしたスーツを着ているが靴は白。髪は短くサングラスをかけた男。ヤクザの兄様である。親父は丁重に話を聞きその場はお引き取り願ったが、その晩から我が家は夕食を済ませても会話ははずまず。そのうち、長男が戻ってきて深刻な話し合いが始まった。

簡単に言うと、我が家の三男のフミオは、昔から問題を起こしてきた。借金をしたり、前借りをしたまま姿をくらましたり。その額が次第に大きくなっていった。この度の問題は会社から多額の金を持って消えてしまったと言う。この金を返してくれと言うのだ。さもなければ、警察沙汰にすると言う。

親父は家を建てたばかりで現金などはない。さあどうしたものかと思案するのだ。支払いについて長男のケイイチと話す。果たして、その支払いだけでことは済むのか?肝心のフミオをどうするのか?

毎夜、そんな話が続く。そこには母親と三男ヒサオも参加する。私はみんなが相談しているすぐ上の2階で勉強している。私が事情を聞くのはただ母親からだった。母親は次のように私に説明してくれた。「父ちゃんは、フミオのことはどうでもいい。ただ、フミオが警察に捕まるようなことになったらカズエの縁談が無くなるし、また、嫁いでいるシズエやキヌエの肩身が狭くなってしまうから、絶対にそれだけは避けなければならない、と言っている。」

私はなるほどと納得した。その後、ヤクザ風の男は何度か我が家を訪れた。大変な夏休みとなった。どうもその男の会社への支払いは9月までには済ませたらしい。そして、ヤクザ風の男は現れなくなった。

そして、フミオからは手紙が届いた。多分、その男からフミオヘ連絡が入ったのであろう。フミオの手紙から分かったことは、フミオは名古屋の興行を業とする会社に勤務していて、その会社がフミオに適切な給料を払わなかったから、正当な金額を拝借したということのようだった。その後フミオはその会社を辞め、大阪に移ったと連絡が入ってきた。

後で分かった話だが、親父はケイイチからお金を借り、支払ったとのこと。また、それから数年後、持っていた田を売って、その金をケイイチに返したという。

今、当時のことを思い出すと悪魔がフミオに乗り移り、それで親父を攻めてきたのだと思う。ところが、それを救ってくれたの不動明王だったのであろうと思う。

不動明王は、大日如来の化身で悪魔と戦う時は不動明王となって戦うのだというのだ。

親父は5年前に国鉄を定年で退職し、家の新築に取り掛かった。山から木や竹を家族で切り出し、大工仕事や屋根瓦作業を除いてはほとんど家族全員で家を新築したのだ。例えば壁塗りや瓦運び、また、庭土を入れて庭の整備は全て家族の作業。家の基礎づくりも家族勢員だから大変なものだ。これらの作業を終えひと段落した時に悪魔が入ってきたのだ。

親父は、どういう訳かこの事件後はお寺の檀家総代となりお寺の再建に尽力した。多分、不動明王の何かを感じたからであろうと私は思う。

不動明王は密教の根本尊である大日如来の化身であると見なされている。「お不動さん」の名で親しまれ、大日大聖不動明王(だいにちだいしょうふどうみょうおう)、無動明王、無動尊、不動尊などとも呼ばれる。アジアの仏教圏の中でも特に日本において根強い信仰を得ており、造像例も多い。真言宗では大日如来脇侍として、天台宗では在家の本尊として置かれる事もある。縁日は毎月28日である。

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