横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

今年の夏のある暑い日のこと、
宅配便が我が家に届きました。
ダンボールの箱を開けてみると、
新聞紙があり、その下からペットボトルが出てきました。
ペットボトルの中では何かが光っていました。
じっと、中を見ると、
20匹以上の蛍が緑色の光を放っていました。
私は、思わず、
「ワーッ」っと、声を上げてしまいました。
ペットボトルの中には、露草が入れてあり、
その露草の間から、あたたかな光がピカーッ、ピカーッ、
と、ゆっくりしたテンポで点滅していました。
その光を見ていると、私はその幻想の中に引き込まれていきました。
この世の中で、こんなにきれいなものがあるのだろうか?
母は、その宅配便の送り主が、二年前の夏、
山中湖に家族で旅行に行ったときに、
偶然、私たちの隣に泊まったおばあちゃんであることを教えてくれました。

私たちは二年前の夏、父の会社の保養所に家族みんなで泊まりに行きました。
私たちの隣の部屋には、優しいおばあちゃんたちが泊まっていて、
すぐに仲良くなりました。
おばあちゃんたちは、4人のグループで、みんな足が不自由でした。
夕食の後、おばあちゃんの一人が、
「お布団を敷きに来てくれましたか?」
と、私たちの部屋に尋ねてきました。
おばあちゃんたちは、少し疲れた様子で、早く横になりたかったようでした。
私の母は、
「私でよろしかったら、お布団を敷きますけど・・・」
と言って、おばあちゃんの部屋に布団を敷きに行きました。
私と弟はお母さんの後をついていきました。
そして、布団敷きの手伝いをしました。
そのとき、4人のおばあちゃんはとても喜んでくれました。

おばあちゃんからは、分かれて数週間後にお礼の電話がありました。
しかし、その後は何の音信もありませんでした。
私は、もうおばあさんのことをすっかり忘れていました。
ところが、二・三週間前、そのおばあちゃんから、
「自分はこれから千葉に行きます。そこにはホタルがいっぱいいるから、
子供たちに送ってやりたいと思っています。
でも、万一、送ることができなかったら、子供の夢をこわしてしまうことになるから、
届くまでは内緒にしていてください。」
と、電話があったそうです。

夜になって、飼育箱に移したホタルを見ると、
まるで季節外れのクリスマスツリーのようでした。
昼間はじっとしていたホタルも、活発に飛び回っていました。
その光景は、夜の道をライトをつけた自動車が走っているようで、とてもきれいでした。
もったいないので、近所のおばさんたちにも、飼育箱をもって見せに行きました。

ホタルの光がこんなに私たちを感動してくれるとは思ってもみませんでした。

「二年前に、ちょっとした出会いで布団を敷きに行っただけなのに、
二年間もズーッとあなたたちのことを思い、何かをしてやりたいと考えていてくれたこと思うと、本当にうれしいね。」
と、母は私と弟に言いました。

もう一本のペットボトルには、ホタルがいた小川の水が入れてあったので、
毎日、その水で霧を吹いてやりました。
そのおかげで、二週間ほどこのあたたかな光を楽しむことができました。

とても心に残る夏の思い出になりました。