なぜ風邪を引くのか?
風邪の原因の90%以上はウィルスである。ウィルスはコロナウィルス、ライノウィルスやアデノウィルスなどなどである。
そして、残念ながら、これらのウィルスに対する特効薬は今のところないのが現実。
ところが、「病院から、抗生物質を出してもらった」、「点滴をしてもらった」などとよく聞くことがある。
しかし、効果という点からは、このことは全くの無意味である。
今の風邪薬は、単にのどの痛みを軽減したり、咳を抑えたりする対処療法しかできないのだ。
風邪の時の点滴は水分補給やビタミンの補給程度である。
その点滴の成分というのは市販されていうポカリスエットか、それよりも濃くした程度である。
抗生物質は細菌の増殖を抑える役割だけで、細菌よりはるかに小さく、構造が全く違うウィルスには全く効果がないのである。
ところが、国立医療国際研究センターが今年行った患者調査によると、風邪を引いた時に抗生物質が効くと答えた人は43.8%もいたと言う。
更に、風邪の時に抗生物質を出してくれる医師は良い医師だと答えた人は33.3%。
それではなぜ多くの人は勘違いしているのであろうか?
それは多くの人に抗生物質は効くものだという神話が浸透しているからだという。
はたして、その神話はどこから出てきたのであろうか?
この神話の話は風邪と肺炎との関係にあるという。
風邪をこじらせると細菌感染を引き起こして肺炎を発症するケースがある。
その際には、原因が細菌なので治療には抗生物質が必要になるのだ。
また、昔の医者は肺炎治療だけではなく予防にも抗生物質を使っていたのだ。
ところが、最近の医学では肺炎の予防効果はないということが明白になってきたのだ。
ところが、医師の中にもこの間違った考えを持っている医師がまだいるという。
しかも、かなりの数が。
すなわち、多くの医師も勘違いしているのだ。
しかし、問題なのは、この不適切な服用による薬剤耐性菌である。
これは薬に対して抵抗性を備えた細菌のことである。
細菌が抗生物質からの攻撃に対し、自らが生き残るために自らの遺伝子を変異させてしまうのだ。
こうなってくると現在ある抗生物質はこの耐性菌には勝てなくなってしまう。
不幸にも、この傾向は世界的に広まってきて、この耐性菌で亡くなる患者は世界で70万人もいるという。
そして、この傾向が続くとこれから30年後の2050年には1000万人にも及ぶだろうと予測されている。
この予測から、各国が対策を打ち始めてきた。
日本では2015年から、鼻、のど、咳の風邪には抗生物質は使用しないようにと指導を始めてきた。
しかし、実態はなかなか変わらず、医師が患者の要望から抗生物質を処方している事実が多々あるという。
我々はもっと賢くならなければならない。
もう、風邪では抗生物質は求めないと。
風邪の場合は、体力をつけて抵抗欲をつけるように、よく寝て休むことが一番ということを肝に銘じて。
実は筆者も今現在、喉をやられてひどい咳をしながら、パソコンに向かっている。
追記、これは昨日のTBSラジオの“森本毅郎のスタンバイ”に出演された松井宏夫氏の話を参考にしました。