結婚披露宴
有田さんがまだ結婚をしていない頃の話。
友達が富山に嫁ぐという話が飛び込んできた。
有田さんには初めての結婚式。
自分の結婚のことを夢見て、胸を膨らまして富山に行った。
友達は裕福な人と結婚すると聞いていたが、噂にたがわず、
一流ホテルで披露宴。
言われるままに長テーブルに座ると、右隣には40代のおじさんが座っていた。
一見して、恩師ではないかと思われる男性。
テーブルを見ると、料理がびっしり。
自然と自分の料理と隣の料理の境界線を確認する。
おお、ここだなと納得。
それにしても食べきれないほどの料理。
持ち帰り用の弁当まで出ていたが、自分は若いし、そんな弁当を持って東京に
もって帰りたくなかった。
だから、自分で全部食べようと思った。
人のスピーチを聞いていても面白くない。
パクパクと食べ始めた。
しばらくすると、隣のその男性が、変な顔をしている。
「なぜ、この人は変な顔をしているのだろうか」と思ったが、構わず食べ続けた。
式も終わりに近づいた頃、隣のおじさんは早めに帰っていった。
多分、遠いところから来ているんだろうな、と思って、あまり、気にもとめなかった。
いよいよ、披露宴も終わりに近づくと、係りの方が来てお土産を袋に入れ始めた。
自分の分は全て食べたので、何もないと思っていたら、係りの方が、
「これはお客さんのですよ。」
「エッ、それが私の?」
私が食べたのは、ひょっとしたら、あの男の人のだったのか?
有田さんは、悪いと思い、正直に、
「私は、ここの料理を食べたんです。」
「それは、隣のお客様のものだったんです。でも、もう帰られたようですから、お客さんがお持ち帰りください。」。
「エッ、私が?」
若い自分には、拒否できなかったので、言われるままに引き出物を持ち帰った。
東京に持ち帰ったときには、その料理は既に痛んでいて、結局捨ててしまった。
思い出すのは、そのおじさんの顔。
人に自分の料理を食べられるほどいやなことはない。
「おじさん、ゴメン」
ひょっとしたら、あのおじさん、遠くから来ていたのではなく、気分を害していたのでは?
アア、私って・・・・・