パキスタン経済・・・回復に出遅れ感目立つパキスタン
先述のWEOによれば、パキスタンのGDP成長率は09年1.9‰に留まり、10年、11年にはそれぞれ3‰、4‰に上昇が予想されるものの、アジア全体の成長速度の半分に
も満たない。
パキスタン経済には、生産性の低い農業や繊維産業が主体といった構造的な問題だけでなく、不安定な治安など投資環境の魅力不足、電力などのインフラ整備不足、政府の財政難による投資不足など、経済成長を妨げている複数の“不足”が存在する。
政府はこれらの不足に対して無策ではないものの、民族・宗教問題、貧困問題、既得権層の反発などが絡むため、支持基盤が盤石とはいえないザルダリ大統領以下、パキスタン政府が大胆な改
革に及び腰となっている。
複数の“不足”に実効性ある政策を政府が打だない限り、パキスタンの経済成長は海外支援と外部環境の改善に依存した不安定な状況が続くことになろう。
財政目標で未達も出ているIMF融資
08年末に国際収支危機に陥ったパキスタンでは、本年末までIMFの融資プログラムが続く。
合意された融資額113億≒のうち、既に約6割がIMFより貸し出されている。
パキスタン中央銀行の外貨準備高は、プログラム開始直前の35億≒から、現在(4月17日時点) 111億≒に増え
たが、実際はこれまでのIMF融資実行額が積み上がったようなものである。
現在、パキスタン政府はIMFと09年末時点のコンティショナリティ達成状況について協議中だが、財政赤字が
目標を上回ったこと、電力料金引き上げ(補助金カット)、新早度(7月~)後に導入するVATの内容等を巡り、IMF
と政府の折り合いがついていないとみられ、2月中に予定されていた12億≒のトランシエの実行が遅れている。
IMFや世銀は、かねてから対GDP比10‰以下の税収の低さを問題視してきており、財政健全化に向け政府がVAT法案を成立させることができるか注目される。
金融市場には期待を示すシグナルも
成長著しいアジアの中で見劣りはするものの、経常赤
字が大幅に減少するなど、国際収支の悪化に歯止めがか
かり、外貨資金繰りが改善するなど経済は最悪期を脱し
ており、金融市場からは悲観論は後退し、期待を示すシ
グナルも見えている。
IMF融資直前に、ソブリン格付けをCCC+に落とした
S&Pは、昨年9月、IMF刎爰助国のサポートによる外貨
流動性改善をもって糾こ戻している。
証券市場はKSE30指数が09年初から240‰近く上昇し、ルピーの対ドノレキ目
場も80台前半で落ち着いている。 08年末には5、,000bps.
前後に達した政府のCDSスプレッドも4月29日で655bps.
(CMAによれば、デフォルト確率は36‰と依然高いが)
まで低下した。
09/10年度(09年7月~10年2月までの8か月間)の
FDI流人類は前年同期比で半分(13億≒)に留まるが、
証券投資の流入には回復の兆しも見られる。
政府への不満を和らげるため、大統領権限を縮小
経済の浮揚や投資環境の改善には、内政や治安など、
いわゆるポリティカルリスクの低下も不可欠である。
2007~08年にかけて、フット元首相暗殺、ムシャラフ大
統領辞任など内政は混乱を極め、その間に政府の統治の
行き届かないアフガン国境地域だけでなくイスラマバー
ドなど都市部にもイスラム過激派のテロが拡がりをみせ、
パキスタン政府は内外の信認を喪失した。
ザルダリ大統領は4月、重要な政治両断を下し≒これ
は18度目となる憲法改正により、大統領の下院解散権の
撤廃や首相の3期目以上の就任を可能とする等の内容を
含むもので、大統領権限の縮小を意味するものである。
もともと大統領率いる与党パキスタン人民党の公約であ
るが、これを実施することで、政府に対する各所からの
反発を和らげることを狙ったものと思われる。しかし、
大統領や閣僚の汚職などに対する野党あるいは司法の追
及が続けば、再び政局を迎えることになろう。
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