警備員として、トッパ先生はあるショッピングモールに朝早く出かけた。
着いたのは、午前8時前。指定では8時半前だが、制服合わせなどでそれより30分前に来いと言われていたため。
幸い、制服の問題もなく、しばらく、ロッカー前で待っていたら、続々と仲間がやって来る。予想通り大体50歳から60歳ばかり。
8時半前には、事務所内で約10人くらいの警備員が並び始めた。
前列右の者が、キョーツケー、敬礼、ナオレ、ヤスメ、と号令をかける。
すると、隊長らしき男が、何やらしゃべり始める。それほど重要と思えぬことを2分程度。そのあと、別の男が前にでできて、
おはようございます、少々お待ち下さい、ありがとうございます、などといったおまじないを唱え、みんなが復唱する。
トッパ先生は、口でモゾモゾ行っていた。
そのセレモニーが終わると、みんな、それぞれ散っていく。
トッパ先生は、ちょっとガタイのいいおじさんに着いて行くように言われた。
どうも、そのガタイのいいおじさんが今日の指導者のようだ。
どうも、最初は受付に立てと言う。
受付とは、ショッピングモールの店舗のスタッフや、ショッピングモールを運営するスタッフが入る入り口に立ち、おはようございます、と挨拶することらしい。
後でトッパ先生は、気づいたのは、この入り口では、IDを持っていない人々に仮のIDを渡すのが一番の仕事のようだ。そのことにより、部外者を入れないようにすることらしい。
ここから出入りする人達は、全てバックヤードを通ってそれぞれの店舗に入って行くのだ。
このIDを渡すのも、初心者には結構難しい。
そこに一時間くらい経ったであろうか、トッパ先生は、また、ガタイのいいおじさんに連れて行かれた。
どうも、開店準備のためらしい。
トッパ先生は、何もできないから、ガタイのいいおじさんのやっている様を見ているだけ。
エスカレーターを稼働させるのに、無線で何やらやり取りをしている。
次に、シャッターの所に来ると、また無線。
シャッターを開けると勢いよく歩き始める。そして、階段を一気に登り始め、自動扉が開くかどうかを調べ、また無線。この間約20分間、早足で歩く。トッパ先生は必死、汗もかく。
一通り終わると、30分休憩という。
トッパ先生、一息入れるとガタイのいいおじさんがやって来て、バックヤードの巡回と言う。トッパ先生言われた通り、そのおじさんに着いて行くが、そのおじさん、結構、歩きが速い。約40分、歩くとトッパ先生の背中には、汗が流れた。
そのおじさんは、トッパ先生に聞く。今、歩いたルートは分かりますか?
分かるはずもない。トッパ先生は両手を広げ、首をすぼめ、外人がやるように答えた。
そのおじさん曰く、明日からは一人で回ってもらいますから、と。
オーノー