横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

タイにはチャンさんという素晴らしい人が東芝医療機器販売代理店の社長だった。
私がタイに初めて入った時、このチャンさんと会って、色々と話しをした。
チャンさんの実直な人柄で大学病院などにも顔が知られていた。
ところが、私が会って一年後に残念ながらチャンさんは亡くなってしまった。
その結果、このビジネスは長女のアパポーンと次女のシリワンが引き継ぐことになった。
アパポーンはチャンさんが生きていた時から、会社の経理をやっていたが、シリワンは全くの未経験者だった。
この二人は代理店会議にも積極的に出席して、頑張っていたが、父親が亡くなって五年後、アパポーンが私に相談したいと申し入れて来た。
話しを聞いて見ると、タイのビジネスは大体、夜決まると言う。すなわち、レストランやバーやクラブなどに行って決まると言うのだ。
そんな世界に、女の自分は踏み込めないと言う。
高額機器になればなるほど、その必要性が高くなる。
男の営業マンに任せたいが、裏金が必要だと言われると、営業マンが信じられないらしい。
こんな場合、どうすればいいのかと聞いてきた。
私は直ぐにシンガポールのKUANさんの会社とのジョイントベンチャーを思い付き、そのことをKUANさんに提案した。
KUANさんは、ちょっと考えさせてくれ、と言う。
KUANさんはシンガポールとマレーシアだけでも大変なのにタイでジョイントベンチャーを作って大丈夫だろうかと思ったに違いない。
もう一つは、自分がタイのマーケットを乗っ取ったと他の代理店に思われはしないかが心配だったようだ。
そこで、私は密かに抱いていた将来の計画を説明した。
インドシナを一つのマーケットとして考え、それを全部KUANさんに任せる。
そのためには東芝とKUANさんとでジョイントベンチャーを作り、そこを通じてそれぞれの国にあるKUANさんの代理店に売る。
このオペレーションにより、何が良くなるかと言うと、KUANさんの一番弱い資金繰りの問題が無くなることと、サービスセンターをシンガポールに持つことが出来る。
実は、二番目のこの問題がより重要なのである。
緊急事態が発生して、パーツが必要な場合、そのサービスセンターから出せることが最大のポイントである。
このことをKUANさんに説明すると彼は即座にタイとジョイントベンチャーをオーケーしてくれた。
アパポーンとシリワンの親代わりにKUANさんはなってくれたのだ。
実際、二年後にはジョイントベンチャーができ、KUANさんが社長になる。
そして、その後、東芝の歴代の社長がアジア諸国に入る時には、必ずシンガポールのKUANさんを訪ね、KUANさんの意見を聞くようになった。特に西室さんはよく訪ねたようだ。
こうして、KUANさんはシンガポールの一代理店の社長ではなくなっていったのだ。

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