横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

パキスタンのカラチにアガカーン大学病院がある。
私が初めてCTを売りに行った病院。
私がまだ主任の時、CTを後進国に売ることを考えた。
そして、最初に入った国がパキスタン。
私はCTの専門家の赤胴と一緒に入った。多分1983年だったと記憶している。
赤胴はCT事業部の主任で、事業部内の若手としては力を持っていた。
当時は、後進国にCTを売るのは禁止されていたが、
私は赤胴と組んでその状況を壊したのだ。
UAEのドバイ経由でカラチに入った。カラチはとても暑い。土地が乾いていて、埃まみれの町。
そこのタージマハールホテルは古い建物だった。
部屋に入り、ルームサービスでビールを注文した。
しかし、待てどもビールは届かない。
そして、忘れた頃に部屋のドアにノックがあった。
ドアを開けると、そこには郵便配達風の男が立っていた。
要件を聞くと、肩から掛けた横カバンからビールを取り出して私に渡してくれた。
そこで初めて理解できた。ここはアラビア圏だから、アルコールは外国人以外は注文出来ないのだと。
冷えてはいないビールで、不味くて飲めなかった。
翌朝、ホテルのコーヒーショップに行くと、男のウェーターばかり。目玉焼きとトーストを注文したが、こんな目玉焼きは食べたことないほど、気持ちが悪かった。
理由は目玉焼きの色。何と黄身が灰色で厚みがない。
これを明日も食べるとなると、嫌でしょうがなかった。
そこで、昼間、他のホテルを探した。すると、あまり遠くない所にホリデイ インがあった。そこにはちゃんと女性のウェィトレスがいた。料理もまとも。
そこで発見した。ここは外国人の世界とアラビア圏の世界があることを。当然、外国人の世界は料金も高かった。
因みに、翌日食べたトーストと目玉焼きは全くまともだった。
翌日、アガカーン大学病院にオマール社長と赤胴と私は行った。アガカーン大学病院は建設途中で、8割程度出来ていた。
早速、病院長に会う。要件は既にが伝えてくれていたから、話は簡単だった。
すなわち、遠路はるばる来てくれてありがとう。しかし、既に2年前、シーメンスのCTを購入しているから、残念ながら、東芝のCTは買えないと言う。
そんなことは元より承知。そこで、あれこれと雑談している時、その病院長が、因みに、東芝のCTの特徴と価格を聞いてきた。
赤胴はCTの特徴を簡単に説明した。
私は価格を次ように説明した。
「アガカーン病院向けのCTの価格は病院長の言い値にしたいと思っている。」
この話で病院長はビックリ。冗談混じりで、US$100,000でもいいのか?と聞いてきたから、勿論オーケーと答えた。そこで、一番驚いたのがオマール社長。
アンビリーバブル‼️という顔をしていた。
私は、もう一つ、条件を出した。
「CTの開所式をやる際に、東芝パーティをやりたい。無論、費用は東芝持ち。そして、そこにはブット首相を招待して欲しい。すなわち、アガカーン大学病院は東芝にとってのモデル病院になってもらいたいためです。」
すると、この病院長は完全に話に乗ってきた。
そこで、双方立ち上がり、握手をした。これで商談成立。
その後、オマール社長との交渉でUS $300,000くらいになった。すなわち、オマール社長の利益と病院長へのリターンも考慮して。
私は、その後、日商岩井の猪俣にこの情報を流し、東芝パーティにブット首相が出席することをパキスタンの日本大使館に伝えて欲しいと頼んだ。
我々が帰国すると、間もなく、パキスタンでCTを受注したことが話題になった。でも同時に、通常価格の半値ではないかとクレームも入った。
そのことで、私と赤胴は非難轟々。
しかし、その後、外務省から東芝の社長宛に電話が入ったことで、事態が逆転するのだ。
国際部の部長が私を呼び、今社長室から電話が入ってきた。
「佐藤、パキスタンで東芝パーティをやるのは本当か?そこにブット首相が出席するというが本当の話か?直ぐに社長に説明に行こう。」
社長室では、秘書室長へ私は説明した。
この時の話は、私の中で既に物語が変わっていた。
すなわち、私のアイデアは全て病院長のアイデアとした。
即ち、東芝の装置を買うから、パーティ費用を東芝が負担してくれ。そこに、私の友人のブット首相を呼ぶからと。
この説明で、「佐藤君、よくやった」ということになった。
そして、その時が来た。
パーティ会場であるホテルにブット首相とアガカーン教団の司祭が私の前に現れた。
ブット首相は白い装束で、すらりとした気品のある方だった。
別に私がしゃしゃり出る場ではなかったので、私はじっと見ているだけだった。
このパーティは東芝のためにはとても良かったらしく、このパーティは火力発電、水力発電の商談にとても有利に働いたらしいことがわかった。
医療機器なんてものは、東芝の大きなビジネスの為のノベルティ扱いだということを勉強した。

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