トッパ先生が、昼の3時過ぎ、パトロールから帰って来たら、オフィスの隣の部屋の前で、仲間の警備員が立哨していた。
その仲間にジェスチャーで聞くと、下手な身振り手振りで、中に警察がいることを知らせてくれた。
私は、既に、パトロール中に、中年女性が万引きしたため、店員か捕まえて、警察を呼んだことは、無線で聞いて事情は知っていた。
取り調べの部屋の扉が半分空いていたので、その万引き犯の顔が見えた。
何と、その犯人は裕福そうな中年女性であった。後で聞いたところ、その女性の財布には五万円以上入っていたそうな。そして、万引きしたものは六千円位の化粧品だったそうな。
万引きした時、店には、他に客は居なかったとも言う。
すなわち、多くの客がいて、店員の数は少ない。だから、万引きしたと言うことではなさそうだ。
この万引き事件で、トッパ先生は、少し考えた。
何故に、盗んだのだろうか?
俗に言うところの、スリルを味わう為?
万引きが成功するだろうと思ったから?
ただ、むしゃくしゃしていたから?
あるいは、常習犯で、いつもの癖?
病気?
万引き家族、万引きグループの一員?
色々な理由があろうとも、結果は哀しいかな逮捕されてしまうのだ。
これこそ、哀れな物語である。
しかし、この物語はこれで終わらない。
そのために、実の親は泣き、夫からは呆れられ、子供達に哀しい思いが残るのだ。
トッパ先生、一人、涙ぐんでしまった。