横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

私が輸出部に移って一年後あたりから、世の中には超音波診断、取り分け産婦人科分野では胎児の発育を診断するのに有効だと言われ始めた。
また、肝臓、胆嚢、膵臓を診断する技術も進んで行った。
心臓や血流の診断も同様であった。
そんなある日、医用機器事業部の中島技師長が我々の部長のところに来て、何やら話していた。すると、何故か私が呼ばれた。
「佐藤君、君、中島技師長と新潟に行ってくれないか?」
と言われた。
この中島技師長は、以前、私が設計部にいた時の部長だったので、よく知っていた。
数日後、私は中島技師長と新潟大学に行き、DR坂口正剛と会った。後で分かったのだが、この先生は肝臓・胆嚢・膵臓の超音波診断ではトップクラスだったらしい。
新潟では、この先生とは特にあまり話さなかった。
中島技師長はこの先生と一緒にブラジル、アルゼンチンに行きたく、色々画策していたことが後で分かった。
中島技師長が私に、
「佐藤君、坂口先生にブラジルの何ヶ所かで超音波診断セミナーをやってもらうから、後は君が現地と話しをまとめてくれ」と言うのだ。
当時、そういったセミナーは日本では一般的だったが、我々が海外でやった経験はなかった。
しかし、言われた通り、私はブラジルの現地法人TMBの大川社長に連絡を取った。
当然、現地も超音波診断セミナーなどやったことはないが、そこは販売会社で、私の提案を引き受けてくれた。
スタッフがサンパウロ大学の有力な先生を捕まえて、サンパウロ大学構内で3回、リオデジャネイロで2回やることになった。
この坂口先生は東北大学の工学部に入ったが、卒業後、九州大学医学部に入り直したらしい。肝臓・胆嚢・膵臓を勉強するために一時的に新潟大学に行っていることは後で判った。
英語はどこで勉強したのか、よくできた。私より7〜8歳くらい年上だった。

先ず、サンパウロ大学の患者をDR坂口が超音波機器で診断し、その診断内容を参加しているドクター達に詳しく説明する。
最初のうちは何が起きているのか、多くの医者は解らないが、そのうち、診断が的確で分かりやすいのに拍手が湧いた。
すると、ドクター達は自らそこに居る営業マンを呼び、片っ端から注文していった。
サンパウロ大学で勉強しているドクター達はほとんどが自分のクリニックを持ち、午後からは自分のクリニックで患者を診るのだ。
その光景を見ていた大川社長はこのセミナー効果を見て、これは凄い、と私に感謝してきた。
リオデジャネイロでも素晴らしい評判だった。
無事、5回のセミナーを終え、我々は、リオデジャネイロを発った。
向かったのは、フォス ド イグアス、すなわち、イグアスの滝である。
リオデジャネイロから、飛行機で3時間位西に飛ぶと焼畑農場が続き、更に飛ぶと深い森だった。
イグアスの滝まで三人で歩いて行った。
ゴーゴーと音を立てて水が流れ落ちて来る様は見事であった。
我々の泊まったのは、ホテル カタラータスといって、正に森の中にあった。
朝食は、庭が良いとホテルの人が言うので、庭のテーブルで朝食を取ることにした。
我々三人がコーヒーを飲みながら朝食を食べていたら、何とオオムやらカラフルな鳥がテーブルの周りに近寄って来た。
こんな朝食は初めてだった。とても、現実世界とは思えない程の経験をした。
中島技師長とDR坂口はそこからアルゼンチンのブエノスアイレスに飛び、私は、リオデジャネイロ経由で日本に帰った。

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