横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

私が市販グループに入る前には、野原という担当者がいた。
口で言うほどいい加減な人間ではなかったが、大きな声で、よくこんなことを言っていた。
「また、今晩も天ぷら?これで3日連続ですよ。」
「今週もお客だよ。東京見物や買い物は、本当に辛い」
「エッ、今期も終わり。参ったな、本当に。広告費の請求書を代理店に送らせなけりぁ。」
と言った具合。
そんな野原に、「毎晩、天ぷらとは豪勢だねぇ」と言うと、
「佐藤さん、週に一回なら最高なんですが、、、」と正直に返ってくる。
また、こうも尋ねる。
「広告費は代理店に送るだけ?自分のために使わない?」
すると、
「佐藤さん、広告費を自分のために使えるわけないでしょう。」
それから数ヶ月後、私が市販グループの課長になって、早速、野原を呼んだ。
「これからは、広告費を自分のために使ってください。決して、請求書だけを送らせないでください。」と言うと野原から、
「佐藤さん、私は佐藤さんの言っている意味が分かりません。もう少し、具体的に言ってください。」と返ってきたので、私は説明した。
「まず、予算作成時に今季はどんな販売促進をするのか、代理店に聞いてください。例えば、彼らが展示会に費用を当てたいと言えば、あなたが出張して、代理店と一緒に活動してください。そうすると、展示会をやる度に自分の経験が自分を大きく変えるでしょう。全て、折角、お金を使うのだったら、自分も一緒に成長してください。」
すると、野原はよーく分かりました、と答えた。
その後、野原はドンドン変わっていった。
こうして、超音波セミナーを各国でやるようになっていった。
私は、もう一つ、スタートさせた。
今までは、新製品ができたら、サービスマンが工場に呼ばれ、勉強していた。
それぞれの国の販売代理店のセールスマンは資料と日本で勉強したサービスマンから知識を得るだけだった。
私は、初めは、ASEANの代理店の優秀なセールスマンを日本にご褒美として招待し、勉強する機会を作った。
新橋第一ホテルの会議室を借りて、セールスマンだけの教育だった。
それが少しずつ拡大していき、代理店会議となっていったのだ。
実はこの代理店会議は、昔から、アイデアはあったが代理店の一同が会すると、それぞれの価格がバレてしまうからまずいというせこい考え方で実現出来なかった。
しかし、私は初めて、ASEAN地域の代理店会議をマレーシアのペナンで三日間で行った。
各国のセールスマンを対象に行った。
すると、そこで予想していた通り、自分のもらっているCTの価格がシンガポールより高いとインドネシアの代理店から上がった。
当時の価格はシンガポールに駐在していた小林課長が出していた。
そこで、みんなの目は小林課長に向けられた。
小林課長はその場に居れなくなり、シンガポールに返ってしまった。
私は、そこでみんなに謝った。
そして、今後は全て価格は条件が違わない限り、同一であることを宣言した。
私は、これをペナン宣言と勝手に名付けた。
小林課長は後日、このことを本社のトップに手紙を書き、私を非難した。
私はそのトップから呼び出されたが、堂々と背景を説明した。

〈補足説明〉
私は、価格は基本的に統一すべきだという考えだったが、どうすれば、それが出来るか分からなかった。
しかし、それを解決してくれたのは、それから2年後である。
南アフリカのベジェレはシーメンスの標準価格という考え方を教えてくれた。
即ち、世界の代理店の持つプライスリストは全て同じもの。そして、各代理店には値引き率を提示するというもの。そうすれば、毎年、価格表を作る必要もなくなる。

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