横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

一年前に買っていた隅田浦の土地に住居を立てようということになり、本格的に業者と折衝した。

この土地は百坪ばかりの山林で斜面だったので、こんな地形にうまく家が建てられないかしらと危ぶんでいたが、夫は自信たっぷりに、素晴らしい家が出来ると自慢していた。

この頃までは隅田浦も家がまばらで、大眺閣ホテルが近くにあり、百万ドルの夜景を宣伝文句として客を集めていた。

この地区は風致地区で、鴻の巣山を背景として、福岡市でも、地形の高い所である。だから、坂道が多いわけである。

樹を切り払い、斜面のままに四階建てを建てた。前後の道路に面した土地なので、裏から見れば四階、表から見れば二階建の家に見えた。急がぬ工事で、一年近く要して出来上がった。

地形上、困難な工事だったが、出来上がってみれば、まさに百万ドルの夜景が堪能できた。

地形上、基礎を強固にする必要があるというので工事費は五十坪の建坪で、四・五百万円は掛かったと思う。

二十七年の正月はこの家で迎えた。

私は三十六年の六月に、不動産の国家試験に合格し、夫は三十五年に、この資格を取っていた。

私も内職をしたり、保険の外交も暫くやった。兎に角、なんか商売を始めようと私は焦っていた。