横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

都会のサラリ-マンは帰宅がいつも夜8時過ぎ。

食事をして、ゴロンと横になりテレビを見て、10時前に風呂に入る。
それから、ニュ-ス・ステ-ションを見たり、筑紫哲也の番組を布団にころがり、
見ていると、12時近く。そこで、
「さあ、寝よう」と言うことになる。

この間、女房から今日一日の出来事、特に沙耶香・郷・静香に関すること、
近所のおばさん達のこと、誰から電話があったことなど様々な事が報告される。
左の耳からはテレビの報道、右の耳からは女房の話。
テレビの方はスイッチを切ればそれでお終い。
ところが、もう一方の話はそうはいかない。
子供達の話をうわの空で聞くわけには行かない。
女房に対して失礼になる。
時には顔も見て話を聞かなければならない。

しかし、話しはドンドン続く。
その間、私がトイレに行く自由は与えられている。
でも、ドアの外では話は続いている。
風呂に入っても同様。
時に、話が込み入ってきたり、私の反応がはっきりしない時などは、
風呂のドアを開いて、中をのぞきながら話してくる。
もっと、進んでくれば裸になって風呂の中まで入って来る。
大変なエネルギ-なんだな、と感心する。

しかし、そんな熱心さに、誠意を持って対応できるほど、
私のほうのエネルギ-は残っていない。
その辺のことは、もう11年も夫婦をやっているので理解はしてくれている。
だから、私は話を聞くだけでいいのである。

こんな訳で、夫婦の会話はウィ-クデイは非常に難しく、
本当の会話は土・日になる。

毎週日曜日の夕方、一週間の買い物に生協に行くことにしている。
車で片道約30分。往復1時間。
この時間が夫婦の会話には最もいい時間であることがお互いに解って来た。
最近では子供達が買い物について来なくなったのも理由の1つである。
最も関心のある問題は、静香の進学と郷の反抗期の問題である。

静香は現在5年生。
私立中学入学のため、今年の4月から塾に通い始めた。
最初は静香の日頃の学習態度から安心していたが、
塾の学習のスピ-ドとレベルが思った以上に速く、
しかも難しいのに驚いた程だった。
国語・社会は良かったが、算数・理科になると自信を無くしてしまう程でした。
それでも、最近では少しずつ自信をつけてきているようで一安心と言うところ。

ところが、我々の心配事はそんなことではなく、仮に私立中学に入ったとして、
資金的に大丈夫かどうかということである。
すると、女房曰く、
「私、そうなったら働くわ。」

郷はサッカ-少年。
暇さえあれば小学校へサッカ-ボ-ルを持って出掛ける。
夜はテレビでサッカ-の試合を見る。
これだけを取って見れば別にとやかく言うほどではない。
ところが、学校の宿題はしない。
そして、静香にちょっかいを出して、終いには姉弟喧嘩。
そうなると、母親の手に負えなくなってくる。

そんな毎日が続き、
「お父さん、何とか言ってよ」ということになる。
「男の子は大体そんなものだ」というと、
「そうかしら。大丈夫かしら。いつになったら、自分から勉強をするようになるかしら。」、
「俺も、親父やお袋にそんなことを心配されながら、育ってきたんだろうなぁ。郷を信頼してやろう。」

「お父さん、もう、お米がなくなるの。お米があと2日しかないの。お父さんのお恵みを。
お代官さまぁ、お慈悲を。お助けを。」
いきなり、そんな話が飛び出して来る。
進学も重要だが、明日の飯こそ重要である。
そのほか、近所の家庭騒動、離婚騒ぎと話題は尽きない。
そんな話しのあとには決まって出て来るのは、
「いいよね、貧しくても、家族が健康で明るく暮らせればね。」
「うちって、周りから随分裕福そうに見えるらしいわよ。
着ているものとか、春夏の旅行なんかから見て。ウフフフ・・・」、
「隣の芝生は青く見えるっていうやつだよ。」

「それにしても、うちは随分助かっている。
いろんなところから、野菜やお米、味噌・醤油が届くんだもの。
有り難い、有り難い。うちからは何にもできないのに。」
「まぁいいさ。出世払いで勘弁してもらおう。いつになるか解らんが。
せっせと、家族新聞を送ることが我々にできる全て。」
「よくも、うちの親父とお袋は我々8人を育てたもんだとつくづく関心するよ。
子供達はよく食べるし、授業料や諸々の費用は出て行くし、冠婚葬祭に関わる出費も大変だっただろうに。
今の我々が苦しい苦しいと言っても比べ物にはならないだう。」
「いつの時代も、親と言うものは大変なものだ。自分たちの事より子供の事。」

「私も働いて、少しでも家計の助けになればと思うんだけど、沙耶香がいるから出るに出られない。」
「今、お母さんが外に出て働くよりも、子供と一緒に居てやったほうが良い。
どうせ、後わずかで静香も郷も巣立って行くんだから。それまでは一緒にいてやれ。
将来の子供の事までは予測できないが、この時期にタップリと愛情を注いでやっておれば、
悪い子供にはならないだろう。
例え、道を踏み外すことがあっても親として十分な事をやってやったというだけで後悔することはないだろう。」
「夕日がきれいね。こうして毎週同じように買い物に来れることが本当の幸せかも知れないね。」、

「・・・・・」、
「お父さん、何とか言ってよ。いつも肝心な時には何も言わないんだから。」、
「男がいちいちそんなことでハイハイ言えるか。」、
「それでも、言わなきゃわかんないじゃぁないの。」
「・・・・・・・・・・」
「もう着いたぞ。」
「ウゥ~ン、モ-ッ」