書き下ろし小説 山の声
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 昌三急死
寿江美は、結婚してアンマンに住んでいた。 子供が出来てからは、大抵に年毎に日本に帰って来ていた。 その時、一ヵ月ほど、日本に滞在し、帰る時、是非、私にアンマンに来るように勧めてくれた。結婚以来、まだ、誰も先方に行っていな…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 夫の晩年
木材の方から手を引いた夫は、機械いじりに没頭した。また、六十歳になって、ボイラーの資格、危険物取り扱いの資格、冷凍機取扱い資格などを取得した。これらの資格を持ち、五・六年間はビルに勤めた。 車は十八歳から乗っていたらしい…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 チャンスは何度も来ない
昭和四十年から五十年にかけ、夫は色々な仕事に手を出していた。 この事業で、この仕事でと、野望を燃やし、元の財産を取り戻そうと、苛立っていたように思う。 四十年頃、肥後に一つの杉山を買っていた。この山は見に行かなかったから…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 寿江美の結婚
「ロンドン大学で勉強している」と言う娘の電話で少しは安心していた。 その後は、私も忙しいので時々思い出すくらいだった。 一ヶ月半ほど経ち、娘から手紙が来た。急いで封を切ると、手紙と一緒に男性の写真が出てきた。手紙には、こ…