書き下ろし小説 山の声
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 選挙事務所
日田市長を三期勤められた広瀬さんは、昭和二十八年に、代議士に立候補された。 私達の家が広く、大通りに面し、殊に広い土間が通りにあることで、 表の土間だけでも事務所にして欲しいと、市からの再三の頼みにより、土間と応接間だけ…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 鶴亀定期
当時、大分銀行では、くじ付きの鶴亀定期預金というものを作り、預金獲得に努めていた。 昭和三十年に、私の家がこの預金の特賞に当たった。 同じ頃、福岡銀行でも、同じケースで預金を集めていた。 大分銀行の賞をもらって、日を置か…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 日田の川開き
日田の 5 月の川開きは賑わった。 町内毎にどんたく隊を編成し、三日間、市内を踊り歩いた。三隅川の屋形船も、予約の客で賑わい、船の上では芸者をまじえ、酒宴が開かれ、鵜飼舟の篝火が、夜の川に輝いた。 間断なく上がる花火も、…
2014年01月14日
書き下ろし小説 山の声
山の声 叔父野村幾平
夫の叔父の野村幾平は、朝鮮平上で手広く旅行用具店を経営しておられたが、朝鮮動乱の時、体一つで内地に引き揚げて来られた。 この叔父は、弁護士の資格もあり、商才もある人だった。笑う顔はとても柔和で、優しかった。 引揚車で、博…