書き下ろし小説　山の声

2014年01月14日書き下ろし小説　山の声

山の声ゼノ神父

或る日、ポーランド人のゼノ神父が日田市駅前にある日田木材組合に立ち寄られた。或る日、ポーランド人のゼノ神父が日田市駅前にある日田木材組合に立ち寄られた。その頃、ゼノ神父は、久留米市小頭町に教会を開いておられた。この教…

2014年01月14日書き下ろし小説　山の声

昭和二十九年に、宮崎県小林市に、一つの杉山を買った。この山の山主は、古久保安次郎という人で、沢山の山林を持つ資産家だった。若い時は自分で郵便局を経営しておられたそうである。小柄な六十歳代の人と聞いたが、私の目にはおじい…

2014年01月14日書き下ろし小説　山の声

昭和二十八年六月に大洪水が起きた。三日前から降り続いた雨に、三隈川は水域を越して、水は両岸にあふれ出した。一時間も経たぬ間に周りの人家は床上まで浸水した。深夜のこととて、人々は寝間着のまま、起き出し、右往左往の大混乱…

2014年01月14日書き下ろし小説　山の声

早津山を売却して、暫く仕事を離れ、のんびりしようと話していたが、仲介人は始終出入りして、山を勧めに来た。「野村さん、あんたはこれから遊びなさい。毎日奥さんから小遣銭をもろうて、パチンコもして遊びなさい。あんたが遊びさえ…