横浜こぼれ話は筆者の佐藤栄次が随筆や意見や考えを書いておりますので、一度見に来てください、

94歳の義理の父親が伊豆の老人ホームにいる。
一昨年、家で転倒し、足を骨折したため、義理の母と一緒に住むわけにいかず、やむなく老人ホームに入れた。
そのおじいちゃんは従来から腎臓に問題あるため月一回、伊豆の順天堂大学病院に行かなけれなならない。
2年前は、まだ、元気が良かったので、実の娘の話にはちゃんと反応していた。しかし、次第に反応は鈍くなり、今ではほとんど会話もしなくなった。
娘である我が妻は、少しでも、父親が喜ぶようにと、病院内のコンビニでお菓子やジュースを買ってやる。
ところが、先月は、そのおじいちゃんが、「うどんが食べたい」と言うのである。
老人ホームのヘルパーさんに、老人ホームではうどんは食べさせないのかと聞いてみると、
「うどんは出しているが、味が薄いのかもしれない」
と返ってきた。
そこで、今回は”何としてでも、おじいちゃんにうどんを食べさせようプロジェクト”がスタートした。
院内にあるローソンのうどん屋のスタートは朝の10時からということが判明。
どうしても医者の診断時間はいつも午前10時過ぎ。それまでに食べさせなければならないのである。
そこで、妻は考えた。
インスタントのうどんにしよう、と。
私は早めにローソンに行き、テーブルを確保。
そこに、妻とヘルパーさんが車椅子で父親を連れてくる。
妻は、直ぐに天ぷらうどんを買ってきて、湯をかけた。そして、しばらく待つ。
妻がどんぶりに箸を入れ、麺をほぐす。
すると、車椅子に座っているおじいちゃんは、何やらもぞもぞ始める。
妻が父親の側に立って、テーブルの上にあった七味唐辛子の袋を持ち上げると、
すかさず、おじいちゃんは口を開ける。
「おじいちゃん、これは七味唐辛子でしょ。」